大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(う)2558号 判決

被告人 岡田実 外四名

〔抄 録〕

原判示の認定事実を含む以上の事実関係に基いて考えてみると、ストライキ中といえども会社は操業の自由を保有し、管理する営業用車両を営業や補修のため搬出、運行することは会社や運転者の業務に属するから、他の組合員らの搬出阻止行動に加わり本件車両のボンネットを手で押したり同車の前方に寝そべるなどした被告人岡田の行為は、威力業務妨害罪の構成要件を一応充たすものというべきである。

しかしながら、右行為は、ストライキ中の労働組合員によるピケッテイングに属する行動の一環としてなされたものであるから、右行為の違法性の有無についてはこの面から慎重に検討を加える必要がある。

当時の情勢は、原判示の経緯により、被告人らの所属する労働組合は無期限ストライキに入り、会社側は右組合員を含む従業員全員を解雇する旨通告する一方、右組合員以外の従業員全員が新設会社に採用されるに及び、争議は深刻化し、組合側は車両が保管されている営業所の車両出入口を閉鎖し、組合員及び支援団体員を構内の仮眠所等に泊り込ませて監視し、会社側による営業用車両の運行ができない状態が続き、当事者の対立は尖鋭化して、車両の補修についてすらも妥協ができない状況にあったところ、一般にタクシー企業におけるストライキの場合、営業用車両が日常の保管場所から搬出されて労働組合側の監視が届かない場所に移され、争議非参加者によって運行されるならば、ストライキの実効は失われ、組合側にとって決定的な打撃となり、使用者側にとっては最も有効な対抗手段となることは見易い道理であるところ、本件において会社側としては、組合側が阻止態勢をととのえる以前に不意をついて素早く車両を搬出するべく計画して実行したもので、その会社側の意図には、もともと当初から、組合員に対し、搬出を中止するよう求めてピケを張り搬出担当の従業員に対する説得行動をする時間的余裕を与えない意思が含まれていたもので、果たせるかな会社の作戦は図に当たり、不意をつかれた組合側は搬出現場への動員がおくれ、会社側は、かけつけた被告人岡田ら組合員の抗議には当初から耳をかさず折からの豪雨をついて搬出を強行した結果、四台目までは抵抗もなく搬出することができ、五台目も組合側の阻止態勢不十分のまま容易に搬出に成功し、六台目である本件車両に至ってはじめて原判示のとおり阻止行動に遭い、これを見た会社側指揮者の竹田営業所長は数分後に当日の車両搬出の中止を決定し、即時に本件車両の運転者に中止を指示したものであって、かような不意打ちの車両搬出が行われる場合には、組合側としては、搬出担当従業員に対して平和的説得を行う機会を確保するための緊急の必要から車両の搬出を一時阻止すべく状況に相応する程度の実力を行使することが許されて然るべきものであり、以上の事情その他原判示の諸般の事情に当審における事実の取調の結果認められる事情をも加えて綜合的に判断し検討してみても、被告人岡田が右搬出阻止行動に加わり他の組合員らと共同して原判示の行動により前記六台目の本件車両の搬出を阻止したのは、法秩序全体の見地から見て許容される限度内の行動として、違法性を欠くものというべきである。これと同趣旨に出て同被告人に無罪を言い渡した原判決は、認定事実に基く判断の過程においていささか措辞妥当を欠く判示部分が散見されないわけではないが、大筋において首肯するに足り、いまだ所論のような判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認及び法令の解釈適用の誤りは存しないから、論旨は理由がない。

(寺尾 渡辺 田尾)

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